本日 43 人 - 昨日 1694 人 - 累計 1302795 人 サイトマップ
  • 記事検索

RSS

積丹岳遭難事故裁判を追う

 救助活動中の過失が問われて裁判となった事例では、2011年1月の積丹岳でスノボーの男性が死亡した遭難事故がある。

 この遭難事故は、次のとおり

 2009年1月31日、札幌市の38歳(当時)の男性は、スノーボードをしようと友人二人と積丹岳(1,255m)へ入山する。

 男性は、午後に友人とはぐれ道に迷い、山頂付近でビバークをする。
 警察と消防は、翌2月1日早朝より捜索し、正午頃に北海道警察の山岳救助隊が男性を発見。

 男性は意識朦朧としていたことから、隊員が交代で男性を抱えて下山していたところ、雪庇を踏み抜き、男性と隊員3名は斜面を約200m滑落する。

 救助隊は男性を捜索の上発見し、ストレッチャー (ソリ) に固定し崖上へ引き上げようとしたが、引き上げ作業中、隊員が交代するため、ストレッチャーをハイ松に固定。しかし、ハイ松が折れ、ストレッチャーに固定された男性は、ストレッチャーごと滑落し不明となる。

 悪天候などのため救助隊は同日の捜索を断念、翌2日朝、男性は崖下の標高約1000m付近で、ストレッチャーに固定された状態で発見され、ヘリコプターで病院に搬送されたが死亡が確認された。 男性の死因は凍死だった。


 この男性の両親らは、男性が死亡したのは救助隊員の救助活動上の過失によるものとして、北海道に対して、8600万円の賠償を求めて札幌地裁に提訴する。

 裁判では、救助活動が適切だったのか、男性の死亡原因は救助活動と関係があるか、登山者として男性側には過失があったのかなどが問われ、2011年11月19日、札幌地裁から判決が言い渡された。

 判決は、死亡男性の過失を8割と認めたが、男性の死亡原因は救助活動の過失が誘発したと認定し、北海道側に約1200万円の支払いを命じた。

 最初に男性を発見した場所のすぐ近くに雪庇があり、進行方向が少しぶれると 踏み抜く虞があることを認識しながら、常時コンパスで位置を確認しながら進むというような慎重な方法をとらなかった。

 雪庇を踏み抜き滑落したことにより、男性の健康状態は著しく悪化し、たとえその後、ストレッチャーを引き上げていたとしても死亡していた蓋然性が高いと認定している。

 よって、救助隊員が合理的な進行方法をとらなかったことと、男性の死亡との間には因果関係があると結論づけている。


 一方では、男性の登山における判断のミスも死亡原因につながったとしている。それは、
①登山当日、天気が崩れる可能性が高いと認識しながら山頂まで登山を敢行した
②冬季の積丹岳は天候の変化が早いことを知っていながら、天気予報を十分確認しなかった
③ビバークに適さない山頂付近でビバークした
④下山方向を誤った
⑤破れやすいツェルトによるビバークをしたため低体温症に罹患した
⑥雪庇に近い場所でビバークしたため救助隊員が雪庇を踏み抜く過失を誘発した 
 などである。

 よって、男性本人の過失を8割と認定して相殺となり、賠償額が減額されたもの。

 裁判後の原告の両親のコメントも発表されている。
 「警察には、どうしたら頼りがいのある救助隊になれるのか考えてもらい、二度と息子のような犠牲を出さないでほしい」。

 このコメントは、救助隊関係者にとっては、何とも言えないものだろう。

 裁判は、その後控訴され札幌高裁で争われ、昨年(2015年)3月26日に判決が言い渡され、死亡した男性本人の過失が7割に変更され、賠償額も約1800万円に増額されたが、北海道は高裁判決を不服とし上告している。


 高裁判決では、「山岳遭難救助は警察の責務であり、救助方法に過失があった」と裁判長が理由を述べていることも重要である。

 裁判はまだまだ続いているが、救助活動中の過失が問われるようであれば、リスクを覚悟での救助活動は敬遠しかねないのでないか。

 山岳遭難には、まず自己責任の世界があって、遭難が発生すれば消防や警察の救助活動は命がけで行われる。

 本来、何もなければ、立ち入らなくてもいい危険な領域においてである。

 このことは肝に銘じて行動したいところである。


 この裁判の結果は、12月1日の次のブログをご覧ください。
 救助活動中の男性死亡で警察に賠償命令


関連記事
北岳で心肺停止の女性は6年前も遭難してた (01月06日)
涸沢岳で女性滑落 (08月16日)
上高地で韓国人行方不明 (05月10日)
北穂高で男性滑落 (10月10日)
奥穂高岳で二人遭難死 (05月04日)
このエントリーをはてなブックマークに追加 Check

前の記事 次の記事
COMMENT
まだコメントはありません。
name.. :記憶する
e-mail.. (必須)

画像認証
画像認証(表示されている文字列を入力してください):