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松本清張「黒い画集」-遭難

鹿島槍ヶ岳2.JPG 後立山連峰を代表する鹿島槍ヶ岳と五竜岳。どちらもダイナミックで岩稜が目立つ険しい山だ。
 この山を題材とした短編小説、松本清張の黒い画集「遭難」がある。

 誰もが憧れる鹿島槍ヶ岳と五竜岳。今年も滑落遭難が多発し尊い命が失われている。
 今年3月には若手登山家の野田賢さん、立教大山岳部OBの男性。先日は、順大山岳部の男子学生が滑落している。
 
 また、鹿島槍ヶ岳北方の稜線は、北アルプス屈指の険しい岩稜帯が続き、核心部には日本三大キレットの八峰キレット(やつみね)がある。 お盆に入り東京都の44歳の男性が、ここで滑落したばかり。

 松本清張の短編小説「黒い画集」の『遭難』は、この鹿島槍ヶ岳の山域が舞台となっているので、この機会に紹介したい。

 ストーリーは、銀行員で支店長代理の江田32歳、部下の岩瀬28歳と浦橋25歳の三人は、8月に休暇を取り、北アルプスの鹿島槍ヶ岳~五竜岳の縦走登山に行く。

 ★三人の登山計画は次のとおり。
〔8月30日〕大町大谷原―(赤岩尾根ルート)―爺ケ岳―冷池小屋(泊)
〔8月31日〕冷小屋―鹿島槍ヶ岳―(八峰キレット)―五竜岳―五竜小屋(泊)
〔9月 1日〕五竜小屋―遠見小屋―白馬神城

img006.jpg 登山前夜は、新宿発の夜行列車で大町へ向かう三人。上司の江田は二人がしっかり睡眠をとれるよう寝台席を手配したのだが、部下の岩瀬だけは眠ることができない。

 天候に恵まれ初日、大町の大谷原から赤岩尾根を登って行くものの、登山経験のある岩瀬はばててしまい、冷小屋(つべたこや)(現在の冷池山荘)到着も大きく遅れてしまう。小屋でも岩瀬は寝むれない夜を過ごす。

 二日目は、怪しい天気であったが三人は五竜を目指すことにする。天候は徐々に悪くなる中、布引山(2,683m)を通過し鹿島槍ヶ岳北峰(2,842m)をなんとか越える。

 しかし、天候はさらに悪化し視界も悪くなり、キレット小屋を前にした八峰キレット付近で、引き返すことを決断する。
 だが、岩瀬のばてがひどく、二人に付いて行くのがやっとという状況になっていた。 

 同じルートを引き返して、布引山(2,683m)を越え間もなく冷小屋と思われた。しかし、なかなか小屋にたどり着かない。
 三人は道を間違え遭難したことを悟る。

 鹿島南峰付近で、西側の牛首尾根に迷い込んでしまったのだ。すでに岩瀬は低体温症の症状が現れ、とても南峰まで戻り山荘へ行く力は無かった。
 
 江田は、浦橋に岩瀬と一緒に残るよう指示し、一人で救援を呼びに向かう。
 この後、岩瀬の症状はさらに悪化し、正気をなくし谷へ滑落し亡くなってしまう。浦橋の憔悴していくが、翌朝救助される。

 この遭難に疑問をもった岩瀬の姉岩瀬真佐子は、いとこの槇田に真相解明を頼む。姉と槙田は、慰霊登山の名目で江田に案内を依頼し、これも仕方ないだろうと、江田はこれを承諾する。

 江田と槙田は、初冬に慰霊登山をすることにした。遭難当時と同じルートを当時と同じように歩き、槙田は真実を解明していく。

 そしてこの遭難は、江田が岩瀬を作為的に遭難させるために、綿密に計画し完全犯罪を狙ったものだと、槙田は突き止める。
 ただ、槙田には江田の動機が分からなかった。

 江田は、真相を知った槙田に対して、一つの企みを考えつく。雪が張り付いた北股本谷を下山して時間を稼がないかと、槙田を誘う。これに槙田も応え、二人は絶壁の谷を下ることに。

 下降中、江田は槙田が知りたかった動機を話す。「岩瀬が自分の妻と不倫していたからだ」と槙田に告げる。動機を話すことにより槙田の気をそらし、江田は槙田が滑落するよう雪面を工作する。

 そして槙田は、十中に嵌りクレパスに滑落してしまい、江田はまた目的を達成し、すべての真相は葬り去られたのだ。

 この後、自らも雪崩に巻き込まれ、命を落としそうになるが難を逃れたところで物語は終わる。

ダウンロード.jpg なお、映画では、江田も雪崩に巻き込まれ、命を落とす設定になっている。

 この小説は、1961年に東宝で「黒い画集『ある遭難』」として映画化され、DVDも出ているのでゲオか蔦屋で借りられる。興味があったら視聴の程。

 ただ、この小説では、山行中に休憩のたびにタバコを吸う場面で、吸い殻をポイ捨てしている。
 50年前の山では、これが有り触れた光景だったのでしょうか。とても違和感があります。

 この小説から改めて学ぶこと、
一、山は、信頼のおける仲間と登ること
一、天気の良い日に登ること。
一、体調整えて登ること。
一、必要以上に休憩し、その都度ザックを下していると逆に体力を消耗すること。
一、水分補給には適量があること。

 以上です。当たり前のことですね。(N)


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