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新田次郎が描く冬の富士山

 冬の富士山は、限られた者にしか登ることが許されない山だ。新田次郎氏が描く冬の富士山とは。

 毎年にように冬の富士山では、滑落遭難が発生し、何人も命を落としてきた。
 今シーズンも昨年末、二件の事故が起き、二人の男性が亡くなっている。

 1人は、新潟県上越市の道の駅「うみてらす名立」の50代の社長の男性だ。社長は、豊富な登山経験と冬山の経験も多かったことから、まさか富士山で滑落するとは信じられないという見方もある。
 しかし、現実は厳しいもの。

 「うみてらす名立」には、昔からよく行くところで、とても他人事には思えません。
 あらためて、ご冥福をお祈りします。


 作家の新田次郎氏は、小説「蒼氷」の中に、冬の富士山の厳しい気象条件や登山について、幾度となくリアルな表現で描いている。

 九合目に近くなると、急に氷が堅くなった。急に氷が堅くなった。今迄氷面をおおっていた雪が吹き払われて、ところどころ蒼氷が覗いている。さらに下ると、氷の上に薄く残った雪が鱗状の斑点を作っていた。

 アイゼンの歯は、鱗の氷には立つが、そこから外れると立たない。堅さとやわらかさの境界がはっきりしないためにうっかり足は動かせない。



 また、アイザイレンした三人パーティーの滑落事故に関する記述がある。

 「一昨年の1月に、僕は単独で吉田口から登ったことがある。公務ではなく、ただの登山者として冬の吉田口を登ってみたかったのだ。

 その時、僕の前をアイザイレンしていった三人パーティーの一人が八合目と九合目の間で滑ったために、三人ともザイルに繋がれて、氷の上を流されていった。七合目の岩に衝突して高く跳ね上がったのを、鎌石の出鼻で見たのだ。身震いするような思いだった」

 守屋は言葉を切った。その時の光景を頭に浮かべた。1人が岩にぶつかって抛り上げられたのが動機でザイルは上手く岩に引っかかった。二人は岩の西側、1人は東側に降り分けられて止った。

 岩の西側に止った一番と二番はザイルにつながれたままもがいていた。一番は服が破れて背中が見えていた。二番は折れた手をぶらぶらさせて、起きあがろうとしていた。岩の東側には三番がからだ中血に染まって倒れていた。


 気象庁職員で、富士山測候所の勤務経験がある新田次郎氏だけに、真実味があるものだ。
 私は、冬の富士山には登ったことがないが、この小説からは、厳しい冬の富士山の様子が手に取るように分かる。

 とても生半可な登山者が踏み込む世界ではないようだ。興味のある方は、是非一読してほしい一冊である。


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