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検証 学習院大阿弥陀岳遭難事故①

DSC_9572 今年2月、学習院大学山岳部の学生二人が、八ヶ岳連峰の阿弥陀岳で遭難し亡くなった。
 学習院輔仁会大学支部山岳部及び学習院山桜会(山岳部OBOG会)では、この事故の検証と原因究明を行い一冊の報告書にまとめている。この報告書は、我々のこれからの山行においても教訓になるので、要約し当方の考察を加え数回に分けてお伝えしたい。

【登山予定】

 学習院大学山岳部の5人パーティー(4年男子主将、2年男子2人、1年男女各1人)は、行者小屋から阿弥陀岳北稜を上り、日帰りで行者小屋に戻る。

 ※今後は、主将をCL、2年生のサブリーダーをSL、もう一人をA、1年の男子をB、女子をCと表記する。


行動軌跡【行動】平成27年2月8日(第1日目)

 5:00行者小屋のテントを出発。出発時は視界も良かった。

 6:00雪が降っていたが風が弱く阿弥陀岳はよく見えた。ハーネス、アイゼンを装着。

 7:00北稜の岸壁に到着。2パーティーに分かれ登攀開始。降雪は強まり天候は悪化してきたが、阿弥陀岳頂上は確認できた。
 岩稜を抜けたあたりから既に視界は悪くなり、5~10mの範囲しか見えない。
吹雪ではないが風は強かった。

 岩場を2ピッチ、スタカット。雪稜を1ピッチ、コンテニュアス。

 頂上手前でロープをしまいゴーグル着用。CLが指示。

 8:00阿弥陀岳山頂に到着。風強く積雪あり視界5~10m。山頂標は膝より下にある。
 赤岳への標識を確認。天候悪化のため早々に下山を始める。

 稜線上を下降中急斜面に出る。急斜面を時計回りに巻いて下降。前方に尾根が続いていた。
 
 文三郎尾根を下山する予定であったが、風が強いので中岳沢を下ることにする。CL指示。

 実際には、中岳方向へ下山せず、南東方向へ下降してしまう。コンパスで確認することはなかった。
 沢を降りている時、SLは違和感を覚える。

 下降し続けると斜面が平らになり川沿いに出た。Aが方向に違和感を感じたが確認はせず。

学習院大遭難ルート8206 しばらくして、行者小屋への時間がかかりすぎるため、疑問に思ったSLがCLに声をかけ相談した結果、ルートが間違っていることに気付く。
 立場川の中にいて舟山十字路方向に進んでいることを確認。

 南稜に続く尾根が近いので、ひとまず南稜の尾根を目指す。

 南稜の尾根を目指し何度も迂回しているうちに沢沿いに大きく落ち込んだ崖に出たので、ロープで10m懸垂下降。

 舟山十字路より南稜を経由した方が行者小屋は近いことから南稜を目指すこと、今夜のビバークの必要性について話し合う。

 SLは手袋が濡れBから予備を借りる。
 CLとCは(遭難で亡くなった2人)は、雪を踏み抜き沢の水に浸かり靴下まで濡らす。Cは靴下の予備がなくBから借り交換する。

 この時点でCには疲労が見られたためSLが後ろからサポートした。
 Bも疲れていた。

 16:30CLとAは、南稜の尾根に取り付く上り口を探し、比較的上りやすい場所を見つけた。立場岳へ続く尾根の樹林帯、推定2100m付近をビバーク地とする。

 18:00CLとAは半雪洞を掘りツエルト二張りを張る。残りの三人は30分遅れて到着。

 Cは靴下を交換したが靴が濡れていたため、また靴下が濡れた。CLは濡れたまま交換していない。

 雪洞の中で、枝、マット、ザック、シュラフカバーを敷き、全員サバイバルシートを羽織る。Cはシュラフカバーに入った。

 20:00雪は降っていたが樹林帯で風はほぼなかった。
 ガスストーブで暖をとる。その後、一晩中燃やし続ける。
 Cは震えていたが、他に着るものを持っていなかった。

 非常食や行動食を食べ、テルモスのお茶を温めみんなで飲む。

 このとき、CLとSLのドコモの携帯電話は通信可能であったが、本部への連絡はしなかった。なお、Aのソフトバンクは不感だった。


【考察】

 この遭難事故が発生した際、ネット上では、「なぜ、明瞭な中岳のコルでルートを間違うのか」、「コンパスを確認しなかったのか」、「なぜ南稜を登り返したのか」など、様々な疑問が投げかけられていた。

 この報告書により、その辺の疑問も少しは判明してきた。

 登頂後のルートは、中岳のコルへ下り、中岳沢を行者小屋まで戻ることを想定していたことは、多くの人が予想していたルートだ。

 ただ、視界が悪くなってもコンパスで方向を確認することなく、斜面を時計回りに下降してしまい。かなり下ってから初めてコンパスで確認をしている。
 この辺が遭難への助長だったことになる。

 こうなるとは想定はしていなかっただろうが、手袋や靴下の予備を持っていないことは反省点だろう。

 ビバーク地点で遭難を自覚していれば、携帯電話が通じたことから救助要請はできた。
 ここで最初の通報の機会を逃してしまった。

(次回へ続く) 


 ※地図は、報告書掲載の地図を一部加工したもの。
  写真は、無雪期の阿弥陀岳。ルートの線は想定による概略線。

注)これまでの関連ブログ
 ★八ヶ岳で学習院大パーティー遭難か
 ★学習院大の二人は雪の中から発見
 ★学習院大しっかり遭難事故を検証すると


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